大甲手

 人生で一番感動した買い物になったかもしれません。

大甲手


 今夏のボーナスを全て使い、念願であった一刀流の稽古道具「大甲手(鬼小手)」を購入して参りました。二ヶ月前に発注し、つい先日、懇意にしている職人さんから完成の連絡をいただいたばかりです。今回、特に上質の分厚い鹿革を厳選していただけたとのことで、非常に高価となりましたが、素晴らしい仕上がりとなっています。


 今回、大甲手を制作いただいたのは、世田谷区用賀にある小林武道具店というお店です。今や日本でも消失寸前となった大甲手を制作可能な武道具店で、一刀流系統を稽古されている方や武道具業界にお詳しい人であれば、ご存知の方も多いと思われます。

 小林武道店は兜師の家柄を出自とする武道具店で、当代まで4代続く老舗です。先代店主は笹森順造先生の直々の依頼で大甲手の制作を始められ、当代店主まで二代に渡り工夫と改良を続けられてきました。こちらで作っていただいた小手は軽く丈夫で、一刀流の苛烈な木刀の衝撃をしっかり受け止めてくれます。実際、先年亡くなられた私の大先輩は、その祖父の代に先代店主から購入したという大甲手を、ごく最近まで使っていました。数十年間の稽古を経て、なお現役という耐久性をこの目で見ていたので、自分が大甲手を購入するならぜひ小林武道具店で作っていただこう、と考えていた次第です。

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 一刀流の大甲手の歴史は古く、資料によれば小野家二代目の忠常の時代に『打太刀手袋始ル』とあり、江戸時代初期には使用されていたと考えられます。初代・小野忠明の代に分かれた忠也流系統の一刀流では小手は使われておらず、二代・忠常の代に派生した梶派一刀流では小手が使われているようなので、恐らくこの記述は正しいと思われます。

 大甲手は鹿革製で、小手一組で鹿一頭分に相当する素材を使うとのことです。正倉院には千年前の鹿革製品が現存しているくらいなので、その耐久性は武道具として理想的とされています。江戸時代は小手の中身に竹と和紙を詰めていたようですが、現代では鹿皮の下に衝撃吸収の素材を幾重にも組み合わせて制作しているとのことでした。小野家十代目の小野業雄からの聞き書きの中には、「将軍ノ大手袋ハ茶クスベ革 紫革ノヘリヲトリシモノト云」との記録もあるそうで、詳細は不明ですがかつては特殊な作りのものもあったと推測されます。

 私が注文したのは5本指が独立可動するタイプで、一応こちらが一刀流の本式の小手とされています。演武会などでよく見かけるミトン型のものは本来は略小手とされるものですが、5本指型はメンテナンス性がかなり悪く、制作費もミトン型より数万円ほど高くなるので、あまり購入される方はいらっしゃらないようです。実際問題、ミトン型の小手で十分用が足りるので、5本指型をあえて購入しなければいけない理由はないのですが……

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 一刀流では形の終わりに毎回大甲手を打つため、他所から小手打ちに特化した流派と見られることがありますが、決して小手打ちに固執しているというわけではありません。小手を打つのは「勝った印に打つ」「仕太刀の打ち込みの鍛錬のために打つ」といったいくつかの意味合いがあり、実際打太刀は大甲手を打たせた時の音の深さや衝撃などで仕太刀の打ち筋を容易に判定することができます。例えば木刀で「叩く」打ち込みになっている場合、大甲手で受けた衝撃は打撃点を中心に放射状にぶわっと広がりますが、「斬る」太刀筋になっていると鞭で打たれたようにピシッと一直線上に衝撃が走ります。そのため、実際に物を斬らなくとも、ある程度その人がどの位「斬れる」太刀を振れているのか判るわけですね。上手い人の打ち込みは、木刀が小手に吸い込まれていく、あるいは吸い付いていくように見えるもので、当たったときに木刀の先が跳ねたり、ズレたりすることがありません。打ち込んだときの音が大きければ良いと言うものでもないですし、打太刀の受け方にもちょっとした口伝があるので、単純な稽古ですがいろいろな勉強が出来ます。

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 さて、そんなわけで清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入した大甲手ですが、製作できる職人さんがほとんどいらっしゃられなくなっている現在、決して高い買い物をしたという印象はありません。良い稽古道具は何より自分自身の上達を導いてくれるものですし、出来れば今後何十年もこの小手を相棒にして稽古に励みたいと考えています。




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.24 2013 武道 comment0 trackback0

大変珍しい演武記録を見つけました

 大変珍しい映像を目にすることが出来たので記録。

①小野十生氏と、そのご子息・小野寅生氏による小野派一刀流の形


②小野寅生氏と井藤尚武氏による小野派一刀流の形その一(大太刀50本、切落組、合刃、張、小太刀、相小太刀、刃引組の途中まで)


③小野寅生氏と井藤尚武氏による小野派一刀流の形その二(刃引組の途中から、仏捨刀、五典)


 小野派一刀流先代宗家であった笹森順造先生の高弟として知られる小野十生先生と、その御子息の小野寅生先生の小野派一刀流の演武です。特に小野十生先生の映像をこういう形で拝見できるとは夢にも思っていなかったので、正直驚きました。

 笹森順造先生の教えを受けられた方といえば、現宗家の笹森建美先生をはじめ、小川忠太郎先生や松元貞清先生、鶴海岩夫先生、清野武治先生、そして石田和外先生といった歴々の名人がいらっしゃり、私にとっても間接的ではありますが、何かとご縁のある方達が多いです。
 こういった形で過去の演武を拝見することが出来たこと、大変嬉しく思います。
 
.21 2013 武道 comment0 trackback0

「ルパン三世VSアイドルマスター」が熱い

 観たあとの爽快感が最高に心地よい作品でした。

【第11回MMD杯本選】ルパン三世VSアイドルマスター

D-2氏

 例年のごとく盛り上がりを見せているMMD杯ですが、今回もまた素晴らしい大作が現れました。D-2氏による、アイドルマスターとルパン三世のクロスMMDドラマ作品です。現在、ダントツで首位を独走中の模様。

 平穏な765プロに、突如送りつけられた怪盗からの予告状。ルパン出現の情報を受けて、かの銭型警部が765プロにやってくるのですが……

 アニメ版ルパン三世のお約束というべき破天荒な展開と、アイマスの世界観がこれ以上ないバランスで融合した作品。コミカルな作品ではあるのですが、見返してみると、5分40秒の再生時間の中に数え切れないほどのパロディネタが詰め込まれてる上、極めて巧妙に伏線が張り巡らされていた事に気付きます。セリフに音声こそついていませんが、純粋にショートアニメとして、とてもハイレベルな作品に仕上がっているように思いました。



2013y08m17d_234214632.jpg

 奇跡のツーショット。投稿者コメントをじっくり読み返してみると、この作品に込められた深い想いを感じることができます。本当に良いものを見せていただきました。
.18 2013 アイドルマスター comment2 trackback0

スーパー北上様の悲劇

 期間限定海域を攻略中、敵潜水艦のクリティカル雷撃を喰らい、育成中の北上改が轟沈するという悲劇が発生……
 
 初轟沈のショックに限定海域に挑む気力はなくしましたが、その直後に放置していたステージ2-4攻略を再開したところ、あっさりとクリアできてしまいました。

2013y08m15d_222002573.jpg
 
 画像を見てお分かりのとおり、なぜか敵艦隊の攻撃が扶桑に集中し、他の艦がほぼノーダメージに近い状態で突破できています。一番戦闘の少ないルートで進めたことと、T字戦有利をボス戦含めて2連続で引けたことが幸いだったようです。2-4は運要素が強いと言われていますが、確かにそのとおりかもしれませんね。

 
.15 2013 艦隊これくしょん comment0 trackback0
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 NovelsM@sterの紹介をメインに活動している「NP」と申します。動画サイトでは「ニコラスP(NicholasP)」名義を用いています。

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